果樹は子育てと同じ。樹への愛情は誰にも負けない。――高野弘法
「こんな桃初めて!」
――農業をこの果樹で始めたきっかけは何ですか?
高野さん:県外の工業大学に通っていた時、寮に住んでいたので毎年のように寮に桃が届いていたんですが、実家が農家である事が恥かしかった為、食べずに捨ててしまっていたんです。それが4年生の時、ふとしたきっかけで桃が届いた事を寮の人に知られてしまいました。桃が届いたと言う事で回りの人何故か喜んでいたので、せっかくだからと思いあげてみたら「なにこれ!?こんなおいしい桃食べたことない!」なんて反応にほんとびっくりして、こんなに喜ばれるものなのかと感じました。この体験から農業に対する価値観が変わりました。直接、人と関われて「おいしい」って言ってもらえるような、ものづくりが出来る職業に魅力を感じたのがきっかけです。
――どうして県外の大学に進学されたのですか?
高野さん:本当は農業を継ぎたくなかったんですよ。桃もあまり好きではなくて…将来は機械系の仕事に就きたいなと考えていました。安直ですが、携帯とか作る方に進みたいなって。でも、うちの桃を食べた人がすごく喜んでいるのを見て価値観が変わりましたね。
――農業と工業、全く違う分野ですが…
高野さん:そうですね、自分は分野が違っても「ものづくり」をしたいなと思っていました。それで、よくよく考えると「農業」も「ものづくり」だと思い、自分としてはそういう所で共通しているのかなと思っています。
――ブドウや桃を栽培し始めたきっかけは何ですか?
高野さん:祖父の代から取り組んでいますが、一つは、立地条件。扇状地で水はけがいい、日照時間が長い、あと都心から近いというのがありますね。盆地なので昼と夜の寒暖差もポイントです。糖度が高くなったり着色に影響するので。もう一つは、自分の性格に合っているからですかね。
――果樹の栽培が自分の性格に合っている?
高野さん:自分は、時期によって多様な種類の野菜を育てて毎日出荷をするというよりは、一年かけてじっくり育てて出荷する方が好きなので、そういう所ですかね。
――どうして減農薬に取り組んでいるのですか?
高野さん:減農薬は父の代から始まったのですが、やっぱり食べて安心なものを作りたいというのは父の希望だったと思います。あと環境にやさしいということがありますね。農薬過剰散布によって、殺さなくてもいい虫までどうしても殺してしまうということがあります。
例えば、クモとか赤トンボとか、そういう生態系が崩れるようなものを撒きたくないということもありますね。当時はとても苦労したと思います。時代的にも減農薬は珍しいことだったと思いますし、ただ売り先を考える際なんか、話を聞いていると本当にタイミングが良くて運が良かったと思いますね。
――タイミングがいい、運が良い、と言いますと?
高野さん:新しい品種を始めた時に、たまたま売り先との話が決まったり、人との縁があるんです。はねだしが多くて困っている時も一緒に売ろうと話をくれたり、そういう運がいいのかな と思っています。
木という生き物に向き合う
――減農薬で苦労したことや、大変だったことはありますか?
高野さん:木との会話じゃないですけど、いい木を育てたいと思っても、なかなか自分の思った通りになってくれないところですかね。木は生き物なので、どうしてもうまくいかない時はずーっと引きずってしまいます。今年初めて一人で葡萄を一から育てて、わからないことも沢山あり、毎日自分で葡萄を見に行くたびに「はぁ〜」ってなるくらいの出来というのが一番苦労している部分ですね。
病気とかも、農薬をいっぱい打てばよくなるとは思うんですが、なるべく打ちたくないですね。あとは親と意見のぶつかり合いですね。
――親との意見のぶつかり合い。
高野さん:会社で言ったら社長と平社員、普通は新米の人と社長の間には距離があると思うのですが、農業の場合、親は社長でもあり親でもあるので、身近な存在だからこそ感情が先に出ちゃうっていうのもあって、毎日の様に意見がぶつかり合いますね。長く積み重ねた父の経験と最新の研究で得た新しい方法が合わされば、もっといいことになるのかなと思います。
のんびりしてもらえる場所
――葡萄狩り体験をさせていただいたのですが、なぜ自分で収穫した分を購入してもらう方法を選んだのですか?
高野さん:うちでは葡萄狩りを始める前から贈答用として葡萄を育ててきました。食べ放題にしていないのは、来てくれた人には私が自信を持っておいしいと言える葡萄を食べてもらいたいですし、「この葡萄が美味しいので食べて下さい」とその場で選んであげた方が特別感が出ると思っているからです。食べ放題ではないので、時間を気にせず、葡萄棚の下でゆっくりしてもらうことが出来ます。
――狩っておしまいではなく、ゆっくりしてもらうということでしょうか。
高野さん:接客している時間は仕事ができないと言ってしまえばそれまでなんですが、予約制をとって、来たいと思ってくれる人と関わっていきたい。やっぱり興味をもっている人じゃないとなかなかここまで来てくれないと思うので、そういう人に説明したいというのはありますね。それで、食べ放題ではなく狩った分だけというシステムにしています。
――高野さんにおいしい葡萄を選んでもらったのですが、見極めのポイントはどこですか?
高野さん:そうですね、粒の大きさの揃い具合、ハリなどを見ています。あと白い粉が表面を覆っていたり、色の濃さも見極めのポイントですね。
人一倍の木に対する愛情。赤ちゃんのように育てていく。
――おいしい葡萄や桃を作る上で、ここだけは負けないという事はなんですか?
高野さん:樹に対する愛情です。自分の子供を育てる感覚で育てていますね。ちゃんとしつけ・教育をしてあげて、よく育ってくれればいい実が育つと思っているので、畑に行ったときは全部の樹を見て回るようにしています。
やったらやった分だけ返ってくる、そこが農業の一番いいところじゃないかなと思います。
――手をかけた分、おいしい葡萄や桃が実るという事ですか?
高野さん:枝の伸ばし方、引っ張り方、実の数を減らして甘い実にしたり、実に袋を被せたり、そんな一つ一つの作業があっておいしい実がなっていると思います。例えば、葡萄の実は一房に理想的な実の数が決まっているので、専用の鋏を使って実の数を減らすのですが、その作業も一時間に数メートルくらいしか進めないので大変です。
――「いい葡萄・桃」は人に例えるとどんな人ですか?
高野さん:「赤ちゃん」とか「孫」に例えられると思います。野菜は時期になったら種をまいて、収穫が終わったらまた耕して種を蒔きますよね。でも果樹っていうのは毎年毎年が成長で、葡萄の枝の伸びる方向も「こっちだよ。」って決めてあげたり、方向を決める時も木の性格や癖を見て決めてあげます。樹を育てることは自分の子供を育てることと一緒。今年はここまで成長した、だから来年はどっちの方向に伸ばそうとか、去年こっちの枝を伸ばすべきだったかな〜って。
たくさんの農家さんがいますが、育てる方法は何通りもあってその全員が正解なんです。樹が自分の子供で、その樹になる実は樹の赤ちゃんなので孫って感覚。本当にいい実がときはすごい嬉しいし丁寧に扱ってあげたりしますね。できるならいいところに進学させてあげたいしね(笑)
――赤ちゃんという事は親に似る、つまり作り手に似るということですか?
高野さん:そうですね。結構顕著に似ると思います。うちでは主に贈答用の葡萄を作っているので、やっぱりちゃんとしたものを作りたいです。貰った時に喜んでもらいたいですね。贈答品を作っている農家さん同士でもそれぞれなので全然違うんですよね。だからそこで方針が違えば、できる味も変わってくるんです。
高野さんの夢
――最後にこれからの高野農園の夢や目標があれば教えてください。
高野さん:大きい夢では日川地区を盛り上げたいってということがありますね。日川に来れば何でも揃うよって。一人一人がスペシャリストになって、良いものが何でも揃うようになったらいいなと思います。そして高野ブランドって言われるくらいのものを作りたい。高野農園としての夢は、農業体験を通して食育に取り組んだり、くつろげるスペースを作ったり、ここに来たからこそ味わえる何かを提供できるようになること。最近流行り始めている農泊もしたいですね。
それと猫や犬など、ペットと農業を結びつける何かができたらと考えています。動物が好きだからこそ出来ることもあると信じ、自分たちの個性を出して、これから厳しくなってくる農業界を生き残れたらな思っています。
葡萄づくりから、ワイン造りへの挑戦
葡萄だけではなく、ワインの製造も行っている高野美夫さんにお話を伺いました。
――長年、葡萄づくりに取り組んでこられたと思うのですが、ワイン造りに踏み出したきっかけは何ですか?
美夫さん:作るヒントになったのは「生酒」ですかね。普通、お酒を造る時は発酵させた後に加熱したり防腐剤を入れたりするんですけど、できるだけ自然なものを作りたいと思ったので、ある意味では、うちで造るワインのヒントになったかなと思います。
――ワイン造りの工程を教えてください。
美夫さん:まず収穫。そして破砕。そして収穫してから一週間から十日間、醸(かも)して圧搾、発酵させます。大体1カ月くらいでヌーヴォの状態になります。「醸(かも)し」というのはタンクで漬け込むことです。糖度が足りない時は砂糖を足したりもします。そしてタンクの上澄みだけをすくって瓶詰します。
――ワインに使っている葡萄の品種は何ですか?
美夫さん:ヤマソービニオンです。山葡萄とカベルネソービニオンを掛け合わせた品種です。
――葡萄の品種によって渋みや味は変わりますか?
美夫さん:かなり違うね。皮の渋みとか一部茎の入った種のところなど、ポリフェノールが出てくるときに渋みが出てきたりすると思います。あと年によっても変わりますね。
――年によっても味が変わる。
美夫さん:よく当たり年とかハズレ年とか言うじゃないですか。「何年物のワインはハズレだから」みたいに。それは天候が悪かったりしたから「ハズレ」で、おいしくないよっていう感じですね。
やっぱりプレミアがつくのは天気のすごくいい年ですね。
「未来夢」とは
――ワインの名前はどうやって決めたのですか?
美夫さん:30年位前に仲間と決めました。英語でもローマ字でもカタカナでも漢字でもいい、いろんなこと考えた上で「未来夢」がいいんじゃないかと。カタカナで「ミライム」漢字でもカタカナでも行けるようにという事で付けました。
――未来夢ワインのこだわりを教えてください。
美夫さん:うちのワインの場合は、瓶詰の際にフィルターも一切使わなくてタンクの上澄みだけをすくって瓶詰します。だからフィルター、防腐剤なし、加熱もしないので生の状態のワインです。一応委託醸造という形なんですが、毎日自分でワインを混ぜに行っています。
――ここだけのワインなのですね。
美夫さん:そうですね。自然のままのワインで香りがいいです。今年からうちの蔵でワインショップを開いて未来夢ワインを広めたいと思っています。
――本日は、どうもありがとうございました。
【プロフィール】
高野弘法(たかの ひろのり)さん。26歳。
県外の工業大学を卒業後、大学で学んだ「ものづくり」の知識を活かし、現在は山梨県で父の高野美夫さんと果樹の栽培に取り組んでいる。
高野農園
住所 〒405-0021 山梨県山梨市中村25
電話0553-23-1869
ウェブサイト
【取材記者の一言】荒井瑠美・大貫佐知子
お二人ともこの果樹に対する愛情にとてもあふれていました。果樹園に案内していただいた時に見た高野さんの笑顔がとても印象的でした。わが子のように育てられている葡萄や桃は、山梨の光を浴びて高野さんのように輝いていました。
――農業をこの果樹で始めたきっかけは何ですか?
高野さん:県外の工業大学に通っていた時、寮に住んでいたので毎年のように寮に桃が届いていたんですが、実家が農家である事が恥かしかった為、食べずに捨ててしまっていたんです。それが4年生の時、ふとしたきっかけで桃が届いた事を寮の人に知られてしまいました。桃が届いたと言う事で回りの人何故か喜んでいたので、せっかくだからと思いあげてみたら「なにこれ!?こんなおいしい桃食べたことない!」なんて反応にほんとびっくりして、こんなに喜ばれるものなのかと感じました。この体験から農業に対する価値観が変わりました。直接、人と関われて「おいしい」って言ってもらえるような、ものづくりが出来る職業に魅力を感じたのがきっかけです。
――どうして県外の大学に進学されたのですか?
高野さん:本当は農業を継ぎたくなかったんですよ。桃もあまり好きではなくて…将来は機械系の仕事に就きたいなと考えていました。安直ですが、携帯とか作る方に進みたいなって。でも、うちの桃を食べた人がすごく喜んでいるのを見て価値観が変わりましたね。
――農業と工業、全く違う分野ですが…
高野さん:そうですね、自分は分野が違っても「ものづくり」をしたいなと思っていました。それで、よくよく考えると「農業」も「ものづくり」だと思い、自分としてはそういう所で共通しているのかなと思っています。
――ブドウや桃を栽培し始めたきっかけは何ですか?
高野さん:祖父の代から取り組んでいますが、一つは、立地条件。扇状地で水はけがいい、日照時間が長い、あと都心から近いというのがありますね。盆地なので昼と夜の寒暖差もポイントです。糖度が高くなったり着色に影響するので。もう一つは、自分の性格に合っているからですかね。
――果樹の栽培が自分の性格に合っている?
高野さん:自分は、時期によって多様な種類の野菜を育てて毎日出荷をするというよりは、一年かけてじっくり育てて出荷する方が好きなので、そういう所ですかね。
――どうして減農薬に取り組んでいるのですか?
高野さん:減農薬は父の代から始まったのですが、やっぱり食べて安心なものを作りたいというのは父の希望だったと思います。あと環境にやさしいということがありますね。農薬過剰散布によって、殺さなくてもいい虫までどうしても殺してしまうということがあります。
例えば、クモとか赤トンボとか、そういう生態系が崩れるようなものを撒きたくないということもありますね。当時はとても苦労したと思います。時代的にも減農薬は珍しいことだったと思いますし、ただ売り先を考える際なんか、話を聞いていると本当にタイミングが良くて運が良かったと思いますね。
――タイミングがいい、運が良い、と言いますと?
高野さん:新しい品種を始めた時に、たまたま売り先との話が決まったり、人との縁があるんです。はねだしが多くて困っている時も一緒に売ろうと話をくれたり、そういう運がいいのかな と思っています。
木という生き物に向き合う
――減農薬で苦労したことや、大変だったことはありますか?
高野さん:木との会話じゃないですけど、いい木を育てたいと思っても、なかなか自分の思った通りになってくれないところですかね。木は生き物なので、どうしてもうまくいかない時はずーっと引きずってしまいます。今年初めて一人で葡萄を一から育てて、わからないことも沢山あり、毎日自分で葡萄を見に行くたびに「はぁ〜」ってなるくらいの出来というのが一番苦労している部分ですね。
病気とかも、農薬をいっぱい打てばよくなるとは思うんですが、なるべく打ちたくないですね。あとは親と意見のぶつかり合いですね。
――親との意見のぶつかり合い。
高野さん:会社で言ったら社長と平社員、普通は新米の人と社長の間には距離があると思うのですが、農業の場合、親は社長でもあり親でもあるので、身近な存在だからこそ感情が先に出ちゃうっていうのもあって、毎日の様に意見がぶつかり合いますね。長く積み重ねた父の経験と最新の研究で得た新しい方法が合わされば、もっといいことになるのかなと思います。
のんびりしてもらえる場所
――葡萄狩り体験をさせていただいたのですが、なぜ自分で収穫した分を購入してもらう方法を選んだのですか?
高野さん:うちでは葡萄狩りを始める前から贈答用として葡萄を育ててきました。食べ放題にしていないのは、来てくれた人には私が自信を持っておいしいと言える葡萄を食べてもらいたいですし、「この葡萄が美味しいので食べて下さい」とその場で選んであげた方が特別感が出ると思っているからです。食べ放題ではないので、時間を気にせず、葡萄棚の下でゆっくりしてもらうことが出来ます。
――狩っておしまいではなく、ゆっくりしてもらうということでしょうか。
高野さん:接客している時間は仕事ができないと言ってしまえばそれまでなんですが、予約制をとって、来たいと思ってくれる人と関わっていきたい。やっぱり興味をもっている人じゃないとなかなかここまで来てくれないと思うので、そういう人に説明したいというのはありますね。それで、食べ放題ではなく狩った分だけというシステムにしています。
――高野さんにおいしい葡萄を選んでもらったのですが、見極めのポイントはどこですか?
高野さん:そうですね、粒の大きさの揃い具合、ハリなどを見ています。あと白い粉が表面を覆っていたり、色の濃さも見極めのポイントですね。
人一倍の木に対する愛情。赤ちゃんのように育てていく。
――おいしい葡萄や桃を作る上で、ここだけは負けないという事はなんですか?
高野さん:樹に対する愛情です。自分の子供を育てる感覚で育てていますね。ちゃんとしつけ・教育をしてあげて、よく育ってくれればいい実が育つと思っているので、畑に行ったときは全部の樹を見て回るようにしています。
やったらやった分だけ返ってくる、そこが農業の一番いいところじゃないかなと思います。
――手をかけた分、おいしい葡萄や桃が実るという事ですか?
高野さん:枝の伸ばし方、引っ張り方、実の数を減らして甘い実にしたり、実に袋を被せたり、そんな一つ一つの作業があっておいしい実がなっていると思います。例えば、葡萄の実は一房に理想的な実の数が決まっているので、専用の鋏を使って実の数を減らすのですが、その作業も一時間に数メートルくらいしか進めないので大変です。
――「いい葡萄・桃」は人に例えるとどんな人ですか?
高野さん:「赤ちゃん」とか「孫」に例えられると思います。野菜は時期になったら種をまいて、収穫が終わったらまた耕して種を蒔きますよね。でも果樹っていうのは毎年毎年が成長で、葡萄の枝の伸びる方向も「こっちだよ。」って決めてあげたり、方向を決める時も木の性格や癖を見て決めてあげます。樹を育てることは自分の子供を育てることと一緒。今年はここまで成長した、だから来年はどっちの方向に伸ばそうとか、去年こっちの枝を伸ばすべきだったかな〜って。
たくさんの農家さんがいますが、育てる方法は何通りもあってその全員が正解なんです。樹が自分の子供で、その樹になる実は樹の赤ちゃんなので孫って感覚。本当にいい実がときはすごい嬉しいし丁寧に扱ってあげたりしますね。できるならいいところに進学させてあげたいしね(笑)
――赤ちゃんという事は親に似る、つまり作り手に似るということですか?
高野さん:そうですね。結構顕著に似ると思います。うちでは主に贈答用の葡萄を作っているので、やっぱりちゃんとしたものを作りたいです。貰った時に喜んでもらいたいですね。贈答品を作っている農家さん同士でもそれぞれなので全然違うんですよね。だからそこで方針が違えば、できる味も変わってくるんです。
高野さんの夢
――最後にこれからの高野農園の夢や目標があれば教えてください。
高野さん:大きい夢では日川地区を盛り上げたいってということがありますね。日川に来れば何でも揃うよって。一人一人がスペシャリストになって、良いものが何でも揃うようになったらいいなと思います。そして高野ブランドって言われるくらいのものを作りたい。高野農園としての夢は、農業体験を通して食育に取り組んだり、くつろげるスペースを作ったり、ここに来たからこそ味わえる何かを提供できるようになること。最近流行り始めている農泊もしたいですね。
それと猫や犬など、ペットと農業を結びつける何かができたらと考えています。動物が好きだからこそ出来ることもあると信じ、自分たちの個性を出して、これから厳しくなってくる農業界を生き残れたらな思っています。
葡萄づくりから、ワイン造りへの挑戦
葡萄だけではなく、ワインの製造も行っている高野美夫さんにお話を伺いました。
――長年、葡萄づくりに取り組んでこられたと思うのですが、ワイン造りに踏み出したきっかけは何ですか?
美夫さん:作るヒントになったのは「生酒」ですかね。普通、お酒を造る時は発酵させた後に加熱したり防腐剤を入れたりするんですけど、できるだけ自然なものを作りたいと思ったので、ある意味では、うちで造るワインのヒントになったかなと思います。
――ワイン造りの工程を教えてください。
美夫さん:まず収穫。そして破砕。そして収穫してから一週間から十日間、醸(かも)して圧搾、発酵させます。大体1カ月くらいでヌーヴォの状態になります。「醸(かも)し」というのはタンクで漬け込むことです。糖度が足りない時は砂糖を足したりもします。そしてタンクの上澄みだけをすくって瓶詰します。
――ワインに使っている葡萄の品種は何ですか?
美夫さん:ヤマソービニオンです。山葡萄とカベルネソービニオンを掛け合わせた品種です。
――葡萄の品種によって渋みや味は変わりますか?
美夫さん:かなり違うね。皮の渋みとか一部茎の入った種のところなど、ポリフェノールが出てくるときに渋みが出てきたりすると思います。あと年によっても変わりますね。
――年によっても味が変わる。
美夫さん:よく当たり年とかハズレ年とか言うじゃないですか。「何年物のワインはハズレだから」みたいに。それは天候が悪かったりしたから「ハズレ」で、おいしくないよっていう感じですね。
やっぱりプレミアがつくのは天気のすごくいい年ですね。
「未来夢」とは
――ワインの名前はどうやって決めたのですか?
美夫さん:30年位前に仲間と決めました。英語でもローマ字でもカタカナでも漢字でもいい、いろんなこと考えた上で「未来夢」がいいんじゃないかと。カタカナで「ミライム」漢字でもカタカナでも行けるようにという事で付けました。
――未来夢ワインのこだわりを教えてください。
美夫さん:うちのワインの場合は、瓶詰の際にフィルターも一切使わなくてタンクの上澄みだけをすくって瓶詰します。だからフィルター、防腐剤なし、加熱もしないので生の状態のワインです。一応委託醸造という形なんですが、毎日自分でワインを混ぜに行っています。
――ここだけのワインなのですね。
美夫さん:そうですね。自然のままのワインで香りがいいです。今年からうちの蔵でワインショップを開いて未来夢ワインを広めたいと思っています。
――本日は、どうもありがとうございました。
【プロフィール】
高野弘法(たかの ひろのり)さん。26歳。
県外の工業大学を卒業後、大学で学んだ「ものづくり」の知識を活かし、現在は山梨県で父の高野美夫さんと果樹の栽培に取り組んでいる。
高野農園
住所 〒405-0021 山梨県山梨市中村25
電話0553-23-1869
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【取材記者の一言】荒井瑠美・大貫佐知子
お二人ともこの果樹に対する愛情にとてもあふれていました。果樹園に案内していただいた時に見た高野さんの笑顔がとても印象的でした。わが子のように育てられている葡萄や桃は、山梨の光を浴びて高野さんのように輝いていました。
- インタビュー
- 2014.11.19 Wednesday
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